リスキリングについての1考察

リスキリングの意味合いについて、考えてみよう。

企業が社員にリスキリングを促す主な狙いは、社内人材を社内の停滞部門から成長部門に移して企業全体の成長力や生産性を高めることだろう。
一方で、国が「新しい資本主義」実行計画で打ち出したリスキリング推進の狙いは、労働市場を活性化して人材の成長産業への移動を促す(つまり転職しやすくする)ために、現在勤務している職場では得られないスキルを個人が学べる機会を増やすことにあるようだ。
いつまでも企業のリスキリング活動に頼っていては、これまで同様個人は社内に留まってしまい、会社を超えて国全体として国民の有効活用を図るダイナミックな取組みにはつながらない。従い、「国のリスキリング支援は現状では7割超が企業を通す形だ。これを、5年をめどに5割超を個人経由にする。(6/7付日経新聞)」という方向性には大賛成だ。
しかし、国は転職しやすい環境の整備案として失業給付の迅速支給や終身雇用を前提とした退職金の課税制度の見直しが検討されているようだが、終身雇用に慣れ切った大多数のサラリーマンの重い腰を上げさせる、つまり転職できるスキルを自己負担で獲得する(自己研さんに励む)ように仕向けないと、転職の大きな波は起こせないのではないか。

どうやって自己研さん意欲を高めるのか?
既存の制度を見直すことで、「個人が自分の選択として転職を選ぶ」ことを後押しできれば、個人の働きがいが高まり、国全体としても国民の生産性向上やウェルビーイング向上につながるのではないかと考える。
例えば、「給与所得者の特定支出控除」がある。今の制度では、現在勤めている会社からの支出の証明が求められており、今の会社に逆に縛られることになりかねない。転職後に新しい勤め先から証明してもらってもよい形にすべきではないか(課税年度も跨いでも良いとして)。
国は、この例に限らず「今の会社」だけでなく「次の会社」であっても不都合のないように税制など制度全般の見直しを図ってもらいたいものだ。