AIの取組みでも、デジタル一辺倒でいいのか?
いま企業の変革や生産性の向上を考えるとき、とにかくDX、DX、DXといったデジタル一辺倒の議論に偏るきらいがなかろうか?
確かに日本と競う諸外国に比して日本(特に中小企業)のいわゆるIT化が遅れており、DXを頑張らなくちゃいけないことは間違いない。
しかし、AIの活用も単純にIT化と同じに捉えていいのだろうか?
渡辺安虎東大教授が、新聞投稿記事のなかで「それらの(AIの生産性に関する)研究では、コールセンターやプログラマー、タクシー乗務員、戦略コンサルタントといった様々な職種で、AIはスキルの低い人の生産性を大幅に上昇させる一方、高い人の生産性はそれほど上昇させないことが示されている。ITの『スキル偏重型の技術変化』とは正反対の結果だ。・・・例えば、タクシー乗務員の仕事は運転・接客・需要予測などいくつかのタスクで構成されるが、タスクごとに必要なスキルは異なる。需要予測をAIが代替するのであれば、タクシー乗務員に重要になるのは接客のスキルかもしれない。AIが契約書をチェックし、画像診断をするのであれば、弁護士や医師も同様かもしれない。」と語っているのは大変興味深い。
今後個人の仕事を構成するスキルのうち、数値化になじむスキルはますますAIにとって代わることでその人の生産性(効率性)は高まる一方、その個人の競争力は数値化になじまないスキルや能力で決まることになるのかもしれない。
世間ではよくAIの進歩で○○という職種が無くなるとか言われるが、そうではなくてその職種で評価される個人のスキルが変わっていく(数値化になじまないスキルが重要になっていく)ということだろう。
そうであれば、これからはデジタル化(効率化)の時代だと考え、皆がそろってそのためのリスキリングばかりを追いかけるのは間違いだ。
AIで代替できないスキルは接客ばかりではない。私は、「これからの社会は、『経験』に裏打ちされた知見こそが個人とその個人の集まりであるチームの提供価値を高める方向に進んでいくのではないか」と考える。